こんじょうなし
 
 なにもそこまで熱くなって怒る事も無いとは思う。
だけど親だって必死だ。斜面を登って後ろから抱きかかえたり、
横に回って倒れた弟を起こしたり、励ましたりおだてたり
2人がかりで汗をかいてがんばっている。
とっくに滑り降りた姉もどうした事かと、板を横にし斜面を一歩ずつ登って来た。
だけど当の本人は砂の塔が波に崩れ落ちるように、へたへたと座り込み、一人で立とうという気もない。やっと立たせて、手を離せば、そこに横座り。しまいに仰向けに寝転がって
「えーんえーん」動く事を拒否。前回してみせたボーゲンは幻だったのか?さっきまでご機嫌で父に抱えられてすいすい滑っていたくせに。
 同じ年の頃、姉は果敢にも滑り降りると大爆発し、
ムックリと起き上がると泣きながら行ってしまったものだ。
 「この、こんじょうなし。」ぐったりと疲れてレストハウスで休憩。そこで弟は皆の疲労を顧みず、皆が無口で怒っているのにの関わらず、
干し芋をにこにこと食べ、出動する雪上車に目を輝かせ、いくらだって椅子に座って上機嫌でいられるんだから情けない。
姉と父はこの弟を見捨てて、どこかに滑りに行ってしまった。
だんだんと静かな怒りが再燃。5年経っても、レストハウスで弟の番。こんな事をしている内に母は年老いて行く。このこんじょうなしを鍛え上げてやる。
そこに父と姉がタイミング良く戻り休む間もなく、
出動命令。
 家族の願いはただ一つ。
 弟よ!今年こそ滑れるようになれ!
 これ以上レストハウスで共に待てない。
そぼ降る雪の中を家族全員に見守られ、弟がゆっくりではあるが確かに一人ボーゲンで進む。それは大様の行進のようであった。
最後に良いイメージを持って終われて良かった。
「また来ようね」の一言に「うん!」と元気に答えた弟であった。
我家の懲りないスキーは続く。     ( by Yoshiko )
 
 
ヒメジオン日誌
2008年2月10日日曜日