小川村シリーズ1   鐘つき
 
 
 6年前にIターンで移り住んだ我家の隣には古くて由緒ある神社があり、その奥には手入れの行き届いたお寺がある。神社からお寺に抜けるルートは子供達にとって安全で自由に動ける格好の散歩道だ。
時折、小柄なおばさんが鐘をつくのに出会い、その響きわたる音色に聞き惚れた。夕方ならアルプスをシルエットに夕焼けで薄く染まる空が見え、前後するように、辺りに「故郷」のメロディーが流れるのである。
 子供達が少し大きくなり、鐘をつかせてもらうようになった。始めにおばさんが大きな音で2回つくと、縄を子供に渡してくれる。どうしたらいいとか何も言わず、
ただ子供に任せる。子供なりにタイミングを計り、大きく引いてからつくがポーンと情けない音だったり、ボンボンと2つ鳴ってしまったり。
春になり日が長くなると近所の子供達と時間になると待っていたり、鐘の1つめを聞くと走って行ったりと通いつめ、家で聞く私が気付かない程みんな上手くなって行った。
 娘が鐘つきから戻ると両手いっぱいに春のお菜を抱きかかえて来る事もしばしばあった。おばさんが自分の畑で丹精したものを、この村に身寄りの居ない私たちに分けてくれるのだ。どこの家にも畑をするおばちゃんが居るのが当たり前の地柄である。
私たちにとってはそうしたお野菜はありがたく、その心使いがとても嬉しいのである。
 冬になり鐘つきの時刻も早まり、寒い夕方に聞こえる鐘の音におばさんを想い出しその優しさに感謝しつつ暮らしている。
 ♪うさぎ追いし彼の山、小ぶな釣りし彼の川.....子供達にとってこの村は故郷になりつつある。    (by Yoshiko)
 
 
ヒメジオン日誌
2006年11月12日日曜日