北海道から10年来の友達Mが来た。愛車ジムニーの
助手席を外し、愛犬を連れて、友達の家や車を宿として
旅して来た。車の中には寝袋、テレマークの板、そして
最近始めたカイトスキーの道具なんかを満載している。
これが女だからすごい。
彼女と私と夫は10年前、北海道でテレマークスキーを一緒にやった仲だ。当時の細くて長い板に革の靴で、新雪の残るゲレンデ横に入り込んだりして、下手だったけど
楽しんだ。一番熱心だった次の年、私は妊娠して現役を去った。
それからずっと彼女は規制の少ないスキー場のシーズン券を買い、管理事務所に届けを出し、ビーコンを持って
林の中の新雪を滑り練習を続けた。そして実際山に行き
深雪を滑った。今では細かった板は、ゴンドラの横に差し込めない程、幅の広いパウダー向きの物、革の靴はプラスチックブーツにと変化を遂げていた。
そして我家はと言うと、今年になって2人めの子がようやくボーゲンで緩斜面を滑れるようになった。そして家族全員で滑る事が出来るようになったばかり。折しも新聞で
当選した栂池のペアリフト券を握りしめた私達家族は、Mと一緒にスキーに行こうということになった。
朝7時半には家を出たのに、中央駐車場は一杯。5歳の弟はゴンドラのある所まで歩いてすでに疲れた。並んで乗った長いゴンドラで着いた先は地吹雪が吹き荒れていた。
Mの柔らかく膝を折り曲げるしなやかな滑りを見て、奮起。それもつかの間、地吹雪という初めての体験に弟の
気持ちはダウン。気持ちがのらないとこんにゃくのように
立つ事すらしない。気持ちが乗ったら、鼻歌まじりで私を抜いて行くのに。ようやく父さんの足に挟んでもらって
弟がたどり着いた時にはみんなの気持ちもダウン。
結局Mが弟に優しく「抱っこして行ってあげるよ。」と話しかけ、そっと立たすと板の間に立たせて一緒に滑ってくれる。ドーッと疲れた私から、「私がこの10年間で
得た物と失った物」と言う言葉がボロリと出た。
皆の気持ちがダウンした時には、これ。Mが作ってくれたサンドウィッチを食べると、皆に元気が出たから不思議だ。強風のため一時停止していたゴンドラもまた動き出した。
弟と私は山頂のレストハウスで休憩。ツマンナクてふて腐れていた姉とMと父さんを弟から解放してあげる。私は重いブーツを脱いで、足を隣りの椅子に伸ばす。ジュースを飲み一息つくと、レストハウスは温かくて眠くなった。弟は私の隣りで私がポケットから出した柿の種を1つづつ機嫌良く食べていた。 つづく