娘に新しい自転車を買った。ホームセンターで気に入ったのが見つからず、インターネットで見るうちにカナダのルイガノというメーカーのマウンテンバイクに決めた。
届くまでに2ヶ月待った。
今まで乗っていた赤いシンプルな自転車は、弟が補助輪を付けて意気揚々と乗り、自分の物にしてしまった。
待ちに待ってついに届いた姉の新しい自転車。黄緑色の美しいフォルムのアルミフレームで、各パーツのデザインが洗練されている。籠も泥よけも無いのにドリンクフォルダーが付いている。とにかくカッコイイ。親の方が喜んでいる始末。
姉弟そろって自転車に乗れるようになると夕方は自転車三昧。なぜか「私、自転車に乗るのが嫌いなの。」と言っていた娘の友達まで熱い。ついに「私もマウンテンバイク買ってもらう。」と宣言している。3人でぐるぐる団地を走り回っている。
そんなある日のこと、向かいの5年生のR君が自分の自転車を出し、またがるとゆっくりとこの輪に加わった。越して7年、始めての参加。
「追いつかれるなー。」と娘をあおった後、「抜いていいぞー。」とR君にも声をかけた。私は神社の前の公道の角に立ち車の来ないことを確認しつつ、周回するのを眺めていた。
勢い良く下ってくると、車体を傾けてコーナーを回り、力一杯加速し、立ち漕ぎでスピードアップを図り逃げているつもりの娘に対して、ゆーっくりと道を譲りつつ、見守るかの用に後ろからついて行くR君。のんびりした娘のこの熱い姿を見たら、あきれるような嬉しいようで、とにかく愉快だった。
「R君、今日はありがとうございました。」
と声をかけると照れたように、うなずくと行ってしまった。
次の日も自転車に乗って現れると今度は弟の横をゆっくり走りながら
「がんばれ。がんばれ。」と声をかけてくれている。
家で料理をしていると、ずぶ濡れになった弟がやって来て大急ぎで服を着替えるとまた出て行った。溝に落ちたのだと姉が言う。
様子を見に行くと
「えらい。えらい。つよいぞ。」と声をかけているR君。
その横で弟は懸命について行こうとしていた。ほっておいて良さそうだった。
この日弟はもう一度溝に落ち、目の上に傷を作っているのに、泣きもせず家に戻り着替えるとまた出て行った。
迎えに行くと
「もっとぐるぐるする」と言い、R君について行こうとした。励ましながら一緒に自転車に乗ってくれたのが本当に嬉しかったようだった。
思えば女の子とばかり遊ぶことの多い弟にとって
お兄ちゃんは何とも男心をくすぐる存在だったに違いない。
「今日は弟までありがとうございました。」とお礼を言った。
意外なRくんの登場。きっと娘の女の子らしからぬ自転車に興味があっただけかもしれない。でも大きく成長した
R君になんだか感謝。 ( by Yoshiko )