お正月あけ展示会を控えた父さんを横浜に残して私と子供達は高速バスで長野に戻った。
「今回は高速バスで帰るんだって?」と問いかけたおじいさんに、
「シンカンセンは金がかかるからさぁ。」と6歳の弟が答えたらしい。親は苦笑。
就学前の弟は無料。9歳の姉と3人で座席に並んで座った。子供が成長を遂げたのか、はたまた母さんが中年の成長を遂げたのか、かなりきつい。
里山でのびのび育っていると言えば聞こえが良いが、はっきり言って田舎者のこの子供達、都会ではちょっと恥ずかしい。通勤ラッシュの電車内グレーのコートのサラリーマンの立ち並ぶ中、ラスタカラーの鎖編みのあや取り紐でせっせと巧みな指使いで1段梯子から9段梯子を繰り返し作り続ける弟。
新宿駅では雑踏の中を村で暮らすように横一列で並んで歩こうとする2人を1列に並ばせた。
バスの待合所では、乗車番号を確認する私の横でいきなりパンと響く音。見れば新聞紙を折り畳んだぱんぱんでっぽうを勢いよく振る2人。弟のデイパックにはおじいさんの家ですでに用意して来た8等分に切られた新聞紙がどっさり。ここでそんな事をするんじゃない。
ようやく乗り込んだバスはとても空いていて、私の口に指を一本立てたシーという合図に対して、2人の静かに話すつもりのこそこそ話がやけに響く。暑いとシャツ1枚になった弟と姉は、時折じゃれながらひたすら折り紙をおり続ける。
しまいにトイレに行ったと思ったら1番後ろの空いた席に移動したようで戻らない。前方数人の乗客にとっても静かな方が良いと判断放置する。
平和を取り戻した私が少しばかりうとうとすると下車地到着予告のアナウンス。バス後部の2人を連れ戻し用意をさせる。停めてあったバモスも無事エンジンが動きいざ小川村へ。
村に近づくにつれ雪が激しくなり、道路沿いの積雪量が増した。関東の青空のもと過ごした私達は次第に無口になり、家の前の積雪にため息をついた。車を雪の中に突っ込んで車の中にあらかじめ用意してあった長靴に履き替えそっと降りると脚がズボッと雪に埋もれた。
トイレの水がでないので外に有る凍結防止の為に停めてあった止水栓を回す。あらかじめ水が激しく出て近づけなくなると困ると蛇口を締めたのが敗因だった。家に戻ると洗面所が洪水。どこかから激しく水が吹き出している。
あー!蛇口の中が凍らないように緩めたネジのことを忘れていた!激しく水を噴出する水道に近づきネジを2つ締める間に私はびしょ濡れ、洗面所には3センチも水がたまってしまった。
わーわーと叫んでびしょ濡れの母を、2人はどーしたどーしたと見に来て立ちすくんでいる。叫ぶ母。水浸しの洗面所。おもむろに姉がお風呂上がり用のマットを水に浸した。
それを掴んでしぼる母。狂ったようにそれを繰り返し洗面所の水を拭き取った。ぜーぜーして横浜に電話して夫に文句を言ったけど何の助けにもならない。ようやくため息をつく。びしょ濡れなのにちっとも寒くなかった。夫に任せて自分で行うことの無かったこの作業。その報いか。
夫なしでこの地に生きるのは厳しいと思い知らされた
2010年スタート。( by Yoshiko )