父の遺して行った車を手放した。首都圏に住む叔父から排ガス規制で車検が取れなくなったものを譲り受けて2年。私の送った黄とオレンジのピーナッツマーク(高齢者用マーク)を上下逆さまに付けて元気に走り回った。
発病してからも病院のベットに縛り付けられる様な暮らしより、自由で気ままな生活を選んだ。長岡の自分の家と
長野の私の家とをこの車で何度往復したことだろう。
インターネットオークションに出すと3人が競って浜松の人が落とした。
その翌日には陸運局に、相手の希望する一時抹消の手続きに赴く。相続になるので故人の戸籍謄本等の書類も多い。以前に比べると受付の人の対応もよく、個人として行っても親切だ。記入例の手引書まで貸してくれた。
いろんな場所の陸運局に行ったが、代書屋の店がひしめく様に並んでいたものだ。よく見れば何てことの無い書類を書いてもらうのにお金を払うなんて信じられなかった。
別の建物に行って用紙を買うよう指示された。窓口の女性が
「代書致しましょうか?有料になります。」と問いかけて来たので
「自分で書けます。」と答えた。
引き取りの日、よく日に焼けたスキンヘッドの運転手の紫のダンプが轟音と共に工房の前に横づけされたと思うと、ダンプの頭が持ち上がった。斜めになった荷台と地面をラダーで繋ぐと、ミューに乗り込みエンジンをかけ自走で載せた。
家の4歳の息子がいたら身動きせず真剣な眼差しを向けるシーンの連続であった。
何時ものことながら、ミュウはあっけなく行ってしまった。浜松には、自動車工場で働く外国人がたくさんいて、こういうタイプ車に人気があるのだそうだ。アジアに売られるのではないらしかった。
保育園から戻った息子に写真を見せて
「ミュウ行っちゃったよ。」と話すと、
自分の「ブルトーザーのガンバくん」という絵本を持って来て
「おんなじだよ。」と見せてくれた。
そこには主人公のブルトーザーが斜めになったダンプに
乗せられている挿絵があった。 ( by Yoshiko )