火鉢
 
 東京の下町にある深川江戸資料館へ行ってみた。訪れた時、江戸の町は夜だった。屋根の上で大きな猫が寝転んで迎えてくれた。薄暗い家々を覗き込み、靴を脱いで上がり込み、路地に迷い込みする内に、鶏が鳴き夜が明けた(夜と昼が20分ごとに入れ替わる仕組みになっている。)八百屋の人参もかぼちゃも昔の日本野菜の形で作られてた。  
 軒下にはオムツが干してある。上からも下からも覗ける厠と水浴び場。丁寧に見るほどに、そこには江戸庶民の暮らしぶりが発見されて実に面白かった。人形なんかは無いのに人の気配がするのである。この深川江戸資料館のホームページに「建物の展示ではなく、そこで暮らす人を紹介したかった」とあったが、その意図したものが確かに感じられる江戸庶民の空間であった。三味線がかけてある長屋の小唄の先生の家にも長火鉢があり、こんなに狭い空間で何人で暮らしていたのだろう思わせる長屋の部屋にも必ず長火鉢があった。これで暖をとり、湯を沸かしお茶を飲むという、生活に欠かせないものだったのだろう。
 以前、退職したお父さんにプレゼントしたいという注文を受け制作した事を思い出した。私の造った長火鉢はその人の暮らしにどんな風に関わる事が出来ただろうか。その時、いろんな資料を探して、祖父の家の屋根裏部屋で埃にまみれた長火鉢を見つけた。その火鉢のそれもまた、人と共にあり今はそこにある。
 私の造る家具もずうっと人と共に有りたいものだと思う。
 
 
 
ヒメジオン日誌
2006年9月3日日曜日